
知っている単語ばかりなのに、ネイティブの英語になると聞き取れない。その原因の多くは、単語と単語がつながって音が変わる「リンキング」にあります。
学校英語では、単語を1つずつ、はっきり読む練習をしてきました。さらにカタカナ英語のくせで、子音のあとに母音を足して「チェック・イット・アウト」のように区切って覚えています。
ところが実際の英語では、これが「チェキラウ」のように一続きで発音されます。頭の中にある音と耳に入ってくる音が違うので、知っている単語でも気づけないのです。
この記事では、音の変化を連結・脱落・同化・弱形・フラップTの5つに分け、例文ごとに「文字通りの読み」と「実際の音」を対比します。すべての例文にナチュラル速度とゆっくり速度の音声を付けたので、ディクテーションで耳を確かめながら読み進めてください。
例文で耳が慣れてきたら、次は好きな動画で練習しましょう。Corodomoの動画学習では、YouTubeのリンクを貼るだけで英語と日本語の2言語字幕が付き、1文ずつ区切ってディクテーションやシャドーイングができます。
英語が聞き取れないと、多くの人は「単語力が足りない」と考えます。しかしスクリプトを見て「なんだ、この単語か」と思った経験があるなら、問題は単語力ではありません。耳が待っている音と、実際に流れてくる音がずれているのです。
日本人学習者の場合、そのずれは主に次の3つから生まれます。
逆に言えば、どこで音が変わるかのパターンを知れば、聞き取りはかなり楽になります。この記事で扱う5つの変化を、先に一覧で見ておきましょう。
| 音の変化 | 何が起きるか | 例(文字通り → 実際の音の目安) |
|---|---|---|
| 連結 | 子音と母音がくっつく | check it out:チェック・イット・アウト → チェキラウ |
| 脱落 | 子音がほとんど発音されない | next week:ネクスト・ウィーク → ネクスウィーク |
| 同化 | 隣の音と混ざって別の音になる | Did you:ディド・ユー → ディジュ |
| 弱形 | 機能語が弱く短くなる | a cup of:ア・カップ・オブ → アカパ |
| フラップT | 母音にはさまれた t がラ行に近くなる | water:ウォーター → ウォーラー |
なお、カタカナはあくまで目安です。英語の音を正確に表すことはできないので、必ず音声で確かめてください。
子音で終わる単語のすぐ後に母音で始まる単語が来ると、2つの語が1語のようにつながります。これが連結(リンキング)です。英語の話者は単語の切れ目でいちいち音を止めないため、境目が消えてしまいます。
カタカナ英語では「ク」「ト」のように子音の後に母音を足すので、つながる余地がありません。「チェック・イット」と読むとき、英語にはない「ウ」や「オ」の音を自分で足しているわけです。この余分な母音を取ると、自然に「チェキッ」とつながります。
では、例文で確かめましょう。まずナチュラル速度で2回聞いて3つの文を書き取り、わからない箇所はゆっくり版で確認します。
ナチュラル速度
ゆっくり
| 例文 | 文字通りの読み | 実際の音(目安) |
|---|---|---|
| Turn it off and on again. | ターン・イット・オフ・アンド・オン・アゲイン | ターニロフ アノナゲン |
| Can I pick it up on Friday? | キャン・アイ・ピック・イット・アップ・オン・フライデー | クナイ ピキラッポン フライデイ |
| Let me check it out first. | レット・ミー・チェック・イット・アウト・ファースト | レミ チェキラウ ファース(ト) |
「ターニロフ」「ピキラッポン」のように、3〜4語が1つの音のかたまりになっています。it の t がラ行に近くなるのは、6章で説明するフラップTです。
子音が続く場所では、前の子音がほとんど発音されないことがあります。これが脱落です。特に t、d、k、p は、口の形だけ作って息をほとんど出さずに次の音へ移ることがよくあります。
日本人学習者は「ネクスト」の「ト」を待ってしまいます。しかし英語では t がほぼ消えているので、待っている音が来ないまま次の単語が始まります。そこで一瞬混乱し、その後の数語まで聞き逃してしまうのです。
音声を聞いて、3つの文を書き取ってください。消えた音も、文法から補ってつづりどおりに書きます。
ナチュラル速度
ゆっくり
| 例文 | 文字通りの読み | 実際の音(目安) |
|---|---|---|
| I'll see you next week. | アイル・シー・ユー・ネクスト・ウィーク | アイゥ シーヤ ネクスウィーク |
| I didn't sleep much last night. | アイ・ディドゥント・スリープ・マッチ・ラスト・ナイト | アイディドゥン スリープ マッチ ラスナイ(ト) |
| I just don't know what to say. | アイ・ジャスト・ドント・ノウ・ワット・トゥ・セイ | アイジャスドンノウ ワッタセイ |
next、last、just の t はほぼ聞こえません。you が「ヤ」、to が「タ」のように弱くなっている点にも注目してください(5章の弱形)。
同化は、隣り合う音がお互いに影響し合い、別の音に変わる現象です。日本人が特に聞き逃しやすいのは、t や d と you の「ユ」がくっつく変化です。
t と y が続くと「チュ」、d と y が続くと「ジュ」に近くなります。Nice to meet you. が「ミート・ユー」ではなく「ミーチュ」と聞こえるのはこのためです。学校の教科書の音声では区切って読まれることが多いので、初めて聞くと別の単語に聞こえます。
音声を聞いて、3つの文を書き取ってください。
ナチュラル速度
ゆっくり
| 例文 | 文字通りの読み | 実際の音(目安) |
|---|---|---|
| Did you get my message? | ディド・ユー・ゲット・マイ・メッセージ | ディジュ ゲッマイ メセジ |
| Could you send it by Monday? | クッド・ユー・センド・イット・バイ・マンデー | クッジュ センディッ バイ マンデイ |
| Don't you think so? | ドント・ユー・シンク・ソー | ドンチュ シンク ソウ |
Did you と Could you は、どちらも「〜ジュ」で始まります。聞き分けの手がかりは最初の子音と、文全体の意味です。get my の t は脱落して「ゲッマイ」になっています。
英語では、意味の中心になる名詞・動詞・形容詞などを強く読み、前置詞・冠詞・代名詞・助動詞などの機能語を弱く短く読みます。この弱く読まれた形を「弱形」と呼びます。
学校では can は「キャン」、and は「アンド」と習いますが、会話では「クン」「ン」程度にしか聞こえないことがよくあります。実はカタカナ語の「ロックンロール」(rock and roll)にも、この弱形の and がすでに入っています。
音声を聞いて、3つの文を書き取ってください。特に1文目の can と can't の違いに注意しましょう。
ナチュラル速度
ゆっくり
| 例文 | 文字通りの読み | 実際の音(目安) |
|---|---|---|
| I can come at four, but I can't stay long. | アイ・キャン・カム・アット・フォー・バット・アイ・キャント・ステイ・ロング | アイクン カマッフォー バライ キャーン(ト) ステイ ロング |
| I'd like a cup of coffee and a muffin. | アイド・ライク・ア・カップ・オブ・コーヒー・アンド・ア・マフィン | アイ(ド)ライカ カパコーフィ アンナ マフィン |
| Tell him to call them back. | テル・ヒム・トゥ・コール・ゼム・バック | テリム タ コーレム バック |
1文目の can は「クン」と短く、can't は「キャーン」と強く長く読まれています。can't の t はほとんど聞こえないので、t の有無で判断しようとすると間違えます。
アメリカ英語では、母音にはさまれた t が、舌先で上の歯ぐきを軽くはじく音になります。これをフラップT(たたき音)と呼びます。日本語のラ行にかなり近い音です。
water が「ウォーラー」、better が「ベラー」に聞こえるのはこのためです。単語の中だけでなく、get it → ゲリッ、a lot of → アララのように、単語の境目でも起こります。連結と組み合わさると、つづりからは想像しにくい音になります。
一方、イギリス英語では t をはっきり発音したり、喉で息を止めるような音にしたりすることが多く、フラップTはあまり目立ちません。映画やドラマで聞き取りにくさが違うと感じるのは、この差も一因です。
音声を聞いて、3つの文を書き取ってください。
ナチュラル速度
ゆっくり
| 例文 | 文字通りの読み | 実際の音(目安) |
|---|---|---|
| Can I get a glass of water? | キャン・アイ・ゲット・ア・グラス・オブ・ウォーター | クナイ ゲラ グラサ ウォーラー |
| It's a lot better than I thought. | イッツ・ア・ロット・ベター・ザン・アイ・ソート | イッツァ ラッ ベラー ザナイ ソー(ト) |
| What are you going to do about it? | ワット・アー・ユー・ゴーイング・トゥ・ドゥー・アバウト・イット | ワラユ ゴナ ドゥ アバウリッ |
What are you は「ワラユ」と3語が一気につながります。going to は会話では「ゴナ」に近く聞こえることが多いですが、書き取りでは going to と書けば正解です。
実際の会話では、音の変化が1つずつ順番に出てくることはありません。最後に、5つの変化がまとめて入った留守番電話のメッセージに挑戦しましょう。
6つの短い文でできています。全部書けなくても大丈夫です。聞き取れなかった箇所に、どの変化があったかを知ることが目的です。
ナチュラル速度
ゆっくり
Hi, it's Emma. I'm calling about the meeting next Tuesday. Could you let me know if it's still at ten? I think I left my notebook in your office. Can you put it aside for me? Thanks a lot.
(エマです。来週火曜日の会議の件で電話しました。今も10時からのままか教えてもらえますか。あなたのオフィスにノートを置き忘れたと思うんです。取っておいてもらえますか。よろしくお願いします。)
| 箇所 | 実際の音(目安) | 主な変化 |
|---|---|---|
| calling about | コーリンガバウ(ト) | 連結・脱落 |
| next Tuesday | ネクスチューズデイ | 脱落 |
| Could you let me know if it's | クッジュ レミノウ イフィッツ | 同化・脱落・連結 |
| still at ten | スティラッテン | 連結・脱落 |
| left my notebook in your | レフマイ ノウブッキンニュア | 脱落・連結 |
| put it aside for me | プリラサイ(ド) ファミ | フラップT・連結・弱形 |
| Thanks a lot | サンクサラッ | 連結・脱落 |
音の変化は、ルールを読んだだけでは聞き取れるようになりません。短い時間でも、毎日耳に通すことが大切です。次のメニューは10分で1サイクルになるように組んであります。
素材は30秒〜1分程度の短い音声で十分です。長い素材を1回聞くより、短い素材を細かく聞き込むほうが、音の変化に気づけます。
| 時間 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 0〜2分 | ナチュラル速度で2回通して聞く | 字幕やスクリプトは見ない |
| 2〜5分 | 1文ずつ止めてディクテーション | 聞こえない箇所は空欄のままでよい |
| 5〜7分 | スクリプトで答え合わせ | 間違えた箇所に変化の種類をメモする |
| 7〜10分 | メモした文をシャドーイング | 音声のすぐ後を追い、つながり方をまねる |
最後のシャドーイングは、聞き取りのための練習です。自分の口で「チェキラウ」と言えるようになると、同じ音が流れてきたときに気づきやすくなります。
素材探しに迷ったら、好きなYouTube動画を使うのがいちばん続きます。Corodomoのシャドーイングなら、動画を1文ずつ再生でき、再生速度も調整できます。無料プランは動画数やAI機能の利用回数に制限があり、AI機能をすべて使うにはPlusプランが必要ですが、このメニューを試すだけなら無料プランで始められます。
ディクテーションの進め方をもっと詳しく知りたい方は、「英語リスニングが伸びない人へ|ディクテーションで中級者の壁を突破する勉強法」もあわせて読んでみてください。
無理にまねる必要はありません。単語を区切ってはっきり話しても、英語はきちんと通じます。ただ、音をつなげて言えるようになると、聞き取りにも役立ちます。シャドーイングを続けるうちに自然に身につく程度で十分です。
連結・脱落・同化・弱形は、イギリス英語でも普通に起こります。フラップTはアメリカ英語やカナダ英語などで目立つ特徴です。イギリス英語では t をはっきり発音するか、喉で息を止めるような音にすることが多くあります。
細かいルールを暗記する必要はありません。この記事の5つの型を知っておけば、ほとんどの変化は「あのパターンだ」と気づけます。大事なのは、ルールを覚えることより、実際の音声で何度も確かめることです。
最初は字幕なしで聞き、答え合わせの段階で字幕やスクリプトを見るのがおすすめです。初めから字幕を見ると、文字を読んで理解した気になり、聞き取れていない箇所に気づけません。
なります。TOEICのリスニング音声も自然な速度で読まれるため、連結や弱形は普通に起こります。また、アメリカだけでなくイギリス、カナダ、オーストラリアの発音も出てくるので、フラップTの有無にも慣れておくと安心です。
英語のリンキングが聞き取れないのは、才能や単語力の問題ではありません。耳が待っている音を、実際の音に合わせて直していけば、聞き取れる部分は着実に増えていきます。
英語学習全体の進め方を見直したい方は、Corodomoの英語学習ページもご覧ください。好きな動画を教材にして、今日から10分の練習を始めてみましょう。